薬剤師の転職市場で最も大きい業種が調剤薬局、ドラッグストアです。
製薬企業や病院から転職する人、調剤薬局からドラッグストアに転職する人、ドラッグストアから調剤薬局かに転職する人などさまざまです。
共通していることは隣の芝生は青く見える点です。
そこで、当記事では後悔のない転職を選択できるよう、2大転職先であるドラッグストアと調剤薬局について細部まで比較しました。
調剤薬局 「調剤薬局 vs ドラッグストア」転職するならどっち?
転職ならドラッグストアが人気で、新卒の就職先としては調剤薬局が人気です。
転職者は給与アップを求め、新卒は専門的なイメージを求めた結果このような人気になっていると推察されます。
ポイント
- 新卒:薬学や調剤に関する専門性の高い職種を求める傾向
- 転職:給与や福利厚生などを求める傾向
当然といえば当然ですよね。
新卒は学生時代に持っていたイメージや薬剤師としてのキャリアを求めるのに対して、転職者は薬剤師の現実を知った上で自分自身や家族のライフステージに合わせて給与や待遇などを重視する必要があるからです。
へー。転職と新卒とで人気が逆転するのね。
転職者はリアルを知っているからより現実的な判断をするんだ
あっ、私も調剤薬局からドラッグに転職したんだったw
なんでドラッグストアに転職したの?
条件と給与が良かったから。
やっぱりそうだよねww
給与の比較
会社や地域によってまちまちですが、一般的にはドラッグストアの方がやや給与は高い傾向です。
ポイント
- 調剤薬局:450〜550万円
- ドラッグストア:500~600万円
※本部勤務や管理職になると700~800万、それ以上を目指せます。
勤務条件の比較
企業や個々の薬局によって様々ですが、一般に夜間の勤務が少なく、土日の休みが取りやすいのは調剤薬局です。
ポイント
- 調剤薬局:19時までの勤務、日祝の勤務無し
- ドラッグストア:22時までの勤務、土日祝日の勤務あり、早番(9時~14時)や遅番(13時~22時)がある
※調剤薬局は病院の開院時間に合わせた実働時間のため、門前の病院が夜間まで空いていればそれに合わせて勤務時間も遅くなります。また、在宅調剤の対応などで土日を当番制としている薬局もあります。
仕事内容の比較
これも会社や企業、個々の薬局によって異なりますがドラッグストアの業務範囲の方が調剤薬局よりも広いです。
ポイント
- 調剤薬局:調剤、在宅調剤
- ドラッグストア:調剤、在宅調剤、物販(接客、品出し、売り場作成、レジ業務など)
福利厚生の比較
会社の規模による違いはありますが、調剤薬局とドラッグストアではほとんど違いはありません。
ポイント
大手の調剤薬局やドラッグストアの場合は以下のような福利厚生があります。
- 遠方へ転勤する際の借上社宅
- 社員割引(OTC、お薬代サポートなど)
- 育児支援(時短社員制度など)
- 介護支援(介護休暇など)
- 企業型確定拠出年金(DC)や退職金制度
個人や中小の調剤薬局の場合は大手のような福利厚生は期待できませんが、代わりに業績が良ければ税金対策でボーナスを弾んでくれたりとオーナーとの関係性により様々なメリットを受けられる場合もあります。
調剤薬局とドラッグストアの年収が異なる理由
薬剤師として働く場所を選ぶとき、給料は特に大きな関心事です。しかし、調剤薬局とドラッグストアでは、なぜ給料に違いがあるのでしょうか?それにはいくつかの理由があります。
業界の収益構造や人材採用競争の観点から比較して解説していきます。
調剤薬局の平均年収が450万〜550万の理由
調剤薬局の年収はドラッグストアよりもやや低めの設定です。以下になぜ調剤薬局の年収が低めに設定されているか。その理由を解説していきます。
理由1 調剤報酬に依存した収益構造
調剤薬局の収入源は調剤報酬だけ。そのため、唯一の収入源である調剤報酬が減ると調剤薬局の業績は大きなダメージを負ってしまいます。
しかも、その調剤報酬を下げにくる調剤報酬改定は2年に1回必ずやってきます。本部ではこの報酬改定に対して専用のチームを作り、最小限のマイナス影響に止めるための対策を考えたりしています。さらに、昔は2年に一度だった薬剤料を引き下げる「薬価改定」については現在は毎年行われています。
収入源が1本で、その収入源が徐々に下げられる状況だと高い給与を維持するのはかなり難しくなります。とはいえ、薬剤師がいなければ会社が成り立ちませんので、競争他社に採用で負けない絶妙なラインで年収設定を行なっているのだと思います。
1点補足するなら、調剤報酬や薬価改定により収益を減らされてはいますが、薬局の経営が成り立たないレベルまで引き下げることはありません。いかに国の財政が厳しくても、国が国民から医療のインフラ取り去るようなことはしないからです。
収入が1本だと色々大変そう、、、
この先の調剤報酬も考えながら人件費を調整しないといけないから大変だよ。
理由2 新卒に人気の業種
調剤薬局がドラッグストアよりも平均年収が低いのは新卒採用の人気が高いことも要因の一つです。要はドラッグストアみたいに給与を上げなくても一定数の新卒採用ができてしまうということです。
会社としてはいいことですが、就職する人にとっては少しでも給与は高い方がいいんですが、この辺りは需要と供給のバランスで成り立っています。
なぜ、調剤薬局が人気かというと、次のような理由が挙げられます。
調剤薬局が人気の理由
- 専門的なイメージがある:名前の通り調剤業務がメインのイメージが強いため、薬剤師としてのスキルや専門性を高めたいという薬剤師の人気を集めます。
- 病院が休みの日は休日のイメージがある:実際に病院が休みの日祝に出勤する必要がないため平日働きたい薬剤師に人気があります。
最近は在宅の実施件数や夜間休日の対応体制などが調剤報酬の加算となっているので、調剤薬局でも在宅調剤をしたり日祝夜間の勤務が必要な調剤薬局もあります。 特別な対応に対しては手当てという形で補填されます。
理由3 魅力的な勤務時間
これも調剤薬局の人気につながる部分ですが、門前の病院の診察時間に合わせて営業時間を設定しているため平日は9時〜19時まで、土曜は13時までの調剤薬局はたくさんあります。
早い時間で勤務時間が終わ職種はやはり人気で需要が高いため給与が低くなる傾向があります。
ドラッグストアの平均年収が500万〜600万の理由
なんか年収が高いのは調剤薬局より大変だかじゃないの?
うん。半分当たりで半分違っているかな。
ドラッグストアの平均年収が調剤薬局よりも高い理由を業界の成長性や安定性のある収益源など切り口で解説していきます。
理由1 複数の収益源による安定性
ドラッグストアが調剤薬局より事業として安定しているのは、その収益源の多様性にあります。
元々、ドラッグストアはOTC医薬品、日用品、化粧品などを扱う小売業として始まりました。過去20年の間に、これらの物販に加えて調剤業務も取り入れる店舗が増えてきました。このため、調剤報酬だけに頼らない事業モデルを築き上げており、物販による収益だけでも事業を維持できる安定感があります。この複数の収益源が、ドラッグストアの収益の安定性を高め、薬剤師の給与にもつながっています。
ポイント
- ドラッグストアは元々小売業のため、調剤報酬に頼らない収益構造がある
- 安定した収益構造は給与を高める効果がある
理由2 ドラッグストア市場の成長
過去30年間で、ドラッグストア市場は急速に成長し、毎年多数の店舗を出店しています。新規出店には多くの薬剤師が必要なため、薬剤師採用競争が激化しています。1店舗出店するためには1名の薬剤師が必要となります。
また、ドラッグストアはスーパーやホームセンターなど他の小売市場とも競争し、シェアを拡大しています。さらに調剤業務を併設するビジネスモデルを採用することで、個人やチェーンの調剤薬局からのシェアを獲得してきました。
ドラッグストアは高額な給与や手厚い福利厚生を薬剤師人材を確保するための必要な投資と考えており、ドラッグストア間で競争を繰り返した結果、給与が高く設定されています。
ポイント
以下のようにドラッグストア市場において薬剤師需要が非常に高いため給与が高めに設定されています。
- 調剤併設ドラッグストアを100店舗出店するためには最低100人の薬剤師が必要
- ドラッグストアの成長に合わせて市場内の薬剤師人材獲得競争が激化
理由3 調剤薬局チェーンとの人材採用競争
ドラッグストアの薬剤師の給与が調剤薬局より高い理由は、業務の範囲と勤務条件にあります。
ドラッグストアの薬剤師は、調剤業務に加えて小売り業務も行うため、業務範囲が広く多様性があります。また、勤務時間が長く、日祝日の勤務もあることが一般的です。
これらの要因により、ドラッグストアの業務は調剤薬局よりも大変とのイメージがあります。そのため、薬剤師を引きつけるためには、給与を高めに設定する必要があるということです。
ポイント
以下の状況をカバーするためにドラッグストアは給与を高めに設定しています。
- ドラッグストアの業務は調剤業務+小売りの業務
- 調剤薬局に比べて勤務時間が長いく日祝の勤務もあり
調剤薬局とドラッグストアの仕事内容の違い
調剤薬局とドラッグストアの両方で経験を持つ筆者が、両業界の業務内容について詳細に解説します。
まず共通する部分としては調剤業務と在宅業務が挙げられます。薬剤師のメイン業務ですので、仕事内容的には調剤薬局とドラッグストアで違いはありません。ですが、調剤業務の流れやインフラ面では調剤薬局の方がやや進んでいる印象がありますので、それらの違いも含めて説明していきます。
調剤薬局の薬剤師業務
調剤薬局の業務は調剤業務か在宅業務の組み合わせです。
調剤業務
調剤業務の流れは一般的に以下の流れです。
- 処方受付(医療事務)
- 処方せん入力(医療事務)
- 薬のピッキング事前準備(医療事務)
- 調剤(薬剤師)
- 調剤鑑査(薬剤師)
- 服薬指導(薬剤師)
- 薬歴の記録(薬剤師)
- 患者フォローアップ(薬剤師)
調剤薬局は月に1000〜数万枚の処方せん受付をしています。そのため、効率的に業務が流れるように設計されています。
次に具体的な内容を解説します。
医療事務と薬剤師の業務分担
薬剤師でなければならない業務とそれ以外の業務を区別し、医療事務が明確に業務分担を行っています。
薬剤師は患者さんへの服薬指導やフォローアップなど対人業務によりかかりつけ薬剤師としての機能を高めていきます。一方医療事務は薬剤師でなくてもできる業務を全般的に行います。
この役割分担がドラッグストアに比べてバラツキなくしっかりできているのが調剤薬局の特徴です。
調剤機器類の導入
自動分包機や軟膏練り機、鑑査システム、処方せんを読み取って自動入力する機械など、効率化や正確性を高める機器が導入されている薬局が多く見られます。
資金力が豊富な大手ほどしっかりと整備されている傾向が強いです。
ワークスケジュール管理
門前の病院の診察時間に合わせて処方せん受付のピークが訪れます。
そのため、1日の業務スケジュールが立てやすく、何時に誰が何をするかをスケジュールに落とし込み、効率的に業務を回しています。
ポイント
- 薬剤師と医療事務の業務分担がしっかりと行われている
- 調剤効率化を進める機器が積極的に導入されている
- 1日の予定にあまりバラツキがない
在宅調剤業務
薬局の在宅業務は個人宅と施設在宅の2種類があります。
個人宅の場合
ケアマネジャーと患者さんと何度か打ち合わせをした上で、患者さんに合わせた薬の管理方法を提案し、薬局で調剤した薬を患者様に届けます。届けた際に患者さんの服薬状況を確認し、アドバイスをしたり、状況を医師と共有して患者さんにとってより良い治療となるように対策を考えます。
がんの緩和医療のように病院から在宅に移行する場合は、退院時カンファレンスで医師、看護師、病院薬剤師と課題の共有と今後の対応方針を考えることもあります。
施設在宅の場合
介護施設長や看護師と薬の管理方法や緊急対応の方法など打ち合わせをし、施設に合わせた薬の準備を行います。
薬の管理についてはカレンダーによる管理が一般的です。
施設には往診医が定期的に施設の患者さんのところを診察に回ります。施設を担当している薬剤師は往診に同行して薬剤師の視点から薬の提案を行うなど協力して患者治療を進めていきます。
ポイント
調剤薬局とドラッグストアの在宅業務に違いはない
その他業務
レセプト請求業務や在庫管理、調剤棚のメンテナンス、棚卸しなど様々な周辺業務があります。これはドラッグストアも調剤薬局も変わりません。
これらの周辺業務は主に医療事務の仕事となりますが、医療事務がわからない点などは薬剤師が責任を持って教える必要があります。
ドラッグストアの薬剤師業務
調剤業務
調剤業務自体はドラッグストアも調剤薬局も基本的に同じです。
ドラッグストアは元々小売りから調剤併設型に変化した業種で、調剤薬局のオペレーションを参考に発展してきました。
元々は調剤薬局の業務フローやオペレーションを参考にしつつも、各企業や店舗によって業務の細かな違いや調剤機器の導入状況にばらつきがあります。ただし、近年のデジタル化(DX)の推進によって、大手ドラッグストアでは業務の効率化と整備が進んでいます。そのため、医療事務と薬剤師の業務分担や調剤関連機器の導入状況などは調剤薬局にはまだ一歩届かない店舗がたくさんあります。
とはいえ、ここ数年のDX推進の流れにより大手ドラッグストアの整備はかなり進んできており、かなり調剤薬局の働き方に近づいてきた印象があります。
ポイント
ドラッグストアは調剤薬局に比べて医療事務との業務分担や調剤機器のインフラにバラツキがある
在宅調剤業務
在宅については調剤薬局とほとんど変わりません。
ドラッグストアにおいても施設の在宅が集約され調剤を自動化する最新機器を試験的に導入し効率化を図っているケースもよく見られます。
接客・販売業務
出店したばかりでまだ処方せんがほとんど来ない店舗などは、OTCや健康食品、医療用品などの接客を行うことがあります。
お客さんから尋ねられることもあれば、売り場をメンテナンスしている時に迷っているお客さんに声をかけて接客を行うこともあります。
数百種類以上のOTCや健康食品、医療機器などの商品についてきちんとお客さんに説明する必要があるたま、知識と経験をしっかりと積み上げる必要があります。また、化粧品やシャンプーや洗顔、ニキビなどの肌に関する内容もよく聞かれます。
調剤の合間に接客を行うこともありいろんな方向に気を張る必要があるかもしれません。
ポイント
- 接客には薬以外にも広い商品知識が必要
- 調剤の合間に接客が発生することもある
売場管理業務
ドラッグストアはお客さんに楽しんでお買い物をしてもらうために季節や行事に合わせて定期的に売場の商品を入れ替えています。処方せんの枚数が少ない店舗の場合は売り場のメンテナンスを手伝うこともあります。
10年以上前はドラッグストアの薬剤師もよく売り場の棚替えなどを行っていましたが、調剤事業の成長が大きいことから最近は希望しない限りはほとんど行うことはなくなりました。
ポイント
- 昔は通常業務として棚替えがあった
- 今は調剤業務が忙しくほとんどこの業務はない
調剤薬局vsドラッグストアの労働環境を比較
ここでは調剤薬局とドラッグストアの職場の雰囲気、勤務時間、福利厚生について比較していきます。
企業の規模や個々の薬局によって変わってきますので、全体的な傾向を把握する程度で読み進めていただければと思います。
職場の雰囲気
両方の職種を経験した筆者の感覚ですが、かなり雰囲気は違います。
調剤薬局は静かな雰囲気、ドラッグストアは活発に調剤室と物販フロアを動き回る雰囲気です。
調剤薬局の職場
調剤薬局では、日々多くの処方せんに基づいて調剤作業が行われています。このため、特に忙しい時間帯には、作業環境がピリピリとした緊張感に包まれることがあります。
一方で、調剤薬局には投薬時間や薬歴を記録する時間など、決まったスケジュールが存在します。これにより、スタッフは予定通りに業務を進めることができ、一定の安心感を持って作業に取り組むことができます。
ドラッグストアの職場
ドラッグストアは調剤室と物販のフロアがあり、業務で行き来することがあるため、調剤室に比べると開放感があります。
プラス面では調剤室のスタッフが物販フロアに行くことで、日常のルーティンからの気分転換が可能です。異なる環境への移動は、精神的なリフレッシュにつながります。
逆にマイナス面では調剤が混雑している時にお客さんからの問い合わせが入り、調剤も接客もどちらも対応しなければならない状況などが発生することもあります。
薬剤師や医療事務だけではなく、物販の店長、パートナー、化粧品担当者などの他職種の方々とコミュニケーション活発に取りながら仕事を進めていきます。
ポイント
- 調剤に特化して少ない仲間と協力しながら仕事を進めるなら調剤
- 物販のスタッフとも活発にコミュニケーションをとってマルチに働きたいならドラッグストア
勤務時間とワークライフバランス
調剤薬局は定時勤務で残業も少なく、ワークライフバランスを保ちやすい傾向にあります。一方、ドラッグストアはシフト制で勤務時間の柔軟性がありますが、週末や祝日の勤務が多く、業務範囲が広いことで、忙しさが増すこともあります。
自身のライフスタイルや働き方の好みに合わせて選択することが重要です。
調剤薬局のワークライフバランス
調剤薬局の勤務時間の特徴は以下のとおりです。
- 平日9時〜18時を基本とした勤務時間
- 土曜日は午前診察の対応のみ
- 日祝は休み
特殊な薬局を除くと概ねこのようなワークライフバランスを確保しやすい勤務時間となっています。
ドラッグストアのワークライフバランス
ドラッグストアはシフト制のため勤務時間の自由度が高いが、他の薬剤師と勤務時間の調整をする必要があるため変則的な勤務時間になる傾向があります。そのため定時帰宅などを求める場合はワークライフバランスを維持するために工夫が必要です。
- シフト制のため9時〜17時、13時〜22時など勤務時間に幅がある
- シフト制のため好きな曜日を休日にできる
- ただし、土日祝の勤務もある
最近はドラッグストアでも調剤だけ19時に閉めたり土日を休みにする店舗も増えてきています。地域差や店舗差はありますが、昔ほど長時間の勤務ではなくなりつつあります。
また、調剤薬局と同じ働き方をしたいという薬剤師のニーズを踏まえて、9時〜18時の定時勤務を希望できる制度などもできてきています。(この場合、給与も調剤薬局と同じ水準となります)
ポイント
- 調剤薬局は土曜半日、日祝休み、〜19時の勤務時間
- ドラッグストアは土日祝の勤務あり、〜22時の変形シフト制
- 最近はドラッグストアも土日祝休み、〜19時の勤務区分の設定あり
従業員への福利厚生
転職するなら福利厚生が良いところに行きたいと、誰でも思うはずです。
初めに結論ですが、福利厚生はドラッグストアだから、調剤薬局だからといって違いがあるわけではありません。業種ではなく会社の規模で大きく変わってきます。大手になる程、福利厚生は手厚くなる傾向です。
ドラッグストアはもともと小売りを主とした業種だったので、ある程度の規模があります。そのため業種vs業種でざっくりと比較するとドラッグストアの福利厚生が良い傾向となります。
福利厚生の代表的なものは以下のとおりです。
- 育児時短制度
- 介護休暇制度
- 社員割引やお薬手当など
- 薬剤師研修費補助
- 退職金制度、企業型確定拠出年金など
自社の調剤を利用した場合に補助が出たり、社員割引が別居の両親まで使えたりと企業ごとに薬剤師に魅力的にうつる様々なサービスを提供しています。
長期キャリアを見据えた将来性を比較
長期キャリアを考えるにあたり、自分自身の方向性をしっかりと考える必要があります。
- 薬剤師としての専門性を磨きたいか?
- 管理職としてキャリアを積みたいのか?
- 本部社員となって仕事のスキルを高めたいか?
薬剤師としての専門性を伸ばしたい場合
薬剤師として生涯患者さんに喜ばれる仕事をしたいと考える方は専門性やコミュニケーションスキルを磨いて薬剤師としての自信の付加価値を高めることを考えると思います。
調剤薬局とドラッグストアにおいてどのような違いがあるのかを紹介します。
調剤薬局で専門性を高める
薬剤師として、効率的な環境で調剤業務に集中することができますが、一つの薬局に長く勤めると、特定の医院やクリニックからの処方せんに偏りが生じ、異なる診療科の知識が身につきにくいという問題があります。そのため、様々な診療科の処方せんを受け付ける薬局への異動を希望したり、転職で新たなチャンスを掴み取ることが必要となります。
また、大手だと敷地内薬局や地域の広域病院の門前の薬局などもあります。このような店舗は医師や病院薬剤師との連携を行い、通常の薬局では経験ができないような希少疾患や難病などのケアに薬剤師の立場として関わることができます。
このような店舗は調剤薬局チェーンの中でも非常に重要かつ出店にコストがかかっているため、薬剤師としての専門性を真剣に高めたい方や、勤務している薬局で誠実に薬剤師業務に取り組んでいる方が抜擢されます。
ドラッグストアで専門性を高める
最近はドラッグストアも月間1000〜2000枚以上の処方せんを受ける店舗が多いため調剤薬局と同様に調剤の経験やスキルを磨くことができます。
また調剤事業に力を入れているドラッグストアはチェーンの調剤薬局同様、広域医療機関の門前に出店するケースがあります。そのため、希望すれば通常の店舗では経験できない専門性を高める場に行くことができます。
しかし、マイナス面としては、調剤業務以外にも接客などの業務が発生するため、調剤に完全に専念する点では、調剤薬局に比べてやや遅れを取っていると感じられるかもしれません。
一方で、プラス面としては、未病や予防の段階から患者さんと接する機会があります。さらに、介護食や介護用品に関する知識も身につけることができ、地域の住民の幅広いニーズに応えることが可能です。これは、調剤薬局ではなかなか経験できない重要な点です。
薬剤師の専門性を上げても効率的に給与は上がらない
薬剤師のキャリアにおいて、専門性を高めることは重要ですが、それだけでは必ずしも給与が上がるとは限りません。給与を効率的に上げるためには、管理職や本部の企画部門へのキャリアシフトを検討し、全社的に影響を与えるような成果を出す必要があります。
もちろん専門性を高めていない薬剤師と比較すると専門性を高めている人の方が昇給する傾向はあります。なぜ専門性が昇給に大きく影響しないかというと、国が決めている調剤報酬のが要因です。
高齢化による医療費上昇で、調剤報酬の基本料などは年々低下傾向です。そして低下した分より専門性の高い行為に対する加算に付け替えられています。つまり、国は薬剤師に専門性の高い業務を行えて当たり前というスタンスで調剤報酬のバランスを変えてきています。言い換えると「専門性の高い業務を行えていない場合は報酬を下げるよ」と言ってきているようなものです。
このような事情があり、専門性を高めないのはそもそもダメ。高めても当たり前。という流れがあるのです。
ポイント
- 専門性を高める場としては大手であれば調剤薬局もドラッグストアもそれほど大きな違いはない
- 環境面では調剤業務に専念できる調剤薬局の方がやや有利な印象
- 薬剤師の専門性を高めることは年収の大幅なアップにはつながらないことに注意が必要
管理職にキャリアアップしたい場合
調剤薬局で管理職になる
管理職としてのキャリアアップは、一般的に「管理薬剤師」から始まり、「薬局長」、「エリアマネジャー」へと進みます。その後、広域の責任者として「課長」や「部長」を目指すことができます。
エリアマネジャーのポジションを経験した後は、ジョブローテーションを通じて本部の社員を目指す道も開かれています。また、そのまま「課長」や「部長」を目指すことも可能です。
エリアマネジャーに抜擢されるためには、専門性を高めるだけでなく、会社の方向性を理解し、薬局の業績向上に取り組むことが求められます。具体的には、薬剤師と医療事務スタッフとの間でしっかりとコミュニケーションを取り、良好な人間関係を築くことが必要です。さらに、会社が推奨するジェネリック医薬品の使用促進や、薬局全体の服薬指導を充実させ、加算を積極的に取るような状況を作ることも大切です。
ドラッグストアで管理職になる
ドラッグストアも調剤薬局同様のキャリアアップの流れです。
管理職としてのキャリアアップは、「管理薬剤師」→「薬局長」→「エリアマネジャー」→「広域の責任者(部長や課長)」に進みます。
エリアマネジャーからジョブローテーションを通じて本部社員になる道も同じです。
調剤薬局と異なる点は、ドラッグストアは成長市場であるためにマネジャーポストが比較的空きやすいという点です。例えば、100店舗の新規出店があれば、それに伴い約10人のマネジャー職が新たに設けられます。
マネジャーを真剣に目指す場合はドラッグストアの方が有利なことが多いです。
管理職は収入アップに直結する
調剤薬局で働くと、仕事の影響範囲は主に薬局内に限られます。しかし、管理職に昇進すると、その責任範囲が大きく拡大します。これにより、影響を与えることができる範囲も広がり、より大きな成果を出すチャンスが生まれます。責任と影響力の増加に伴い、給与も大幅に上昇する傾向があります。
ポイント
- 管理職としてのキャリア形成の流れ調剤薬局とドラッグストアで大きな違いはない
- 成長市場のドラッグストアの方が管理職のポストが空きやすい
- 収入アップを目指すなら管理職になるべき
本部社員となって様々な仕事をしたい場合
調剤薬局の本部社員になる
調剤薬局チェーンの本部には一般的に以下のような部署があります。
- 薬局運営部:薬局の業務全般の管理運営
- 医療連携室:医療機関、介護施設への営業
- システム部:調剤システムや物流システムの管理
- 企画関連部門:販促やサービス開発
- 経営企画部、人事部、総務部、財務部、お客様相談室、DX関連部署
ジョブローテーションでは薬剤師の採用に関わる人事部や薬局の運営に関わる部署などに配属されて本部の経験を積む流れが多く見られます。
企業によっては公募などもあり、現場から直接本部へ行く事例もあります。
ドラッグストアで本部社員になる
ドラッグストアの本部には一般的に以下のような部署があります。
- 薬局運営部:薬局の業務全般の管理運営
- 医療連携室:医療機関、介護施設への営業
- システム部:調剤システムや物流システムの管理
- 企画関連部門:販促やサービス開発
- 経営企画部、人事部、総務部、財務部、お客様相談室、DX関連部署
- 物販の運営部:物販の業務全般の管理運営
- 商品部:医薬品、化粧品、日用品などを取引先と交渉するバイヤー業務など
- 販売促進部:アプリや広告、各種販促施策の立案実行
- 物流部門:商品を店舗まで届ける仕組みの管理
ドラッグストアの場合は調剤薬局の組織に加えて、物販を支える組織が多数存在します。
希望を出し、薬剤師の仕事と全く関係のない部署に異動をすることができます。
筆者は以前物販の管理部署に3年ほど配属になったよ。
あなたに合った選択とは?
より良い将来の選択をするために、自分自身が何を優先して求めているか、一度紙に書き出して整理するとスッキリして良い結論が出せると思います。
今回の内容をざっと箇条書きで振り返ってみましょう。
まとめ
【調剤薬局の特徴】
- 調剤薬局の平均年収は450〜500万
- 勤務条件はワークライフバランス重視
- 調剤、在宅に専念できる環境
- 福利厚生は大手ほど良くドラッグストアとの比較ではあまり変わらない
- 管理職や本部社員のポストはドラッグストアに比べやや空きにくい
【ドラッグストアの特徴】
- ドラッグストアの平均年収は500〜600万
- シフト制で土日祝も勤務の可能性あり
- ただし、調剤薬局の薬剤師と同じ働き方となる制度あり
- 調剤業務に加えて接客や売場メンテがあることも
- 出店規模が大きいため管理職や本部のポストが空きやすい
1万字以上の長文をここまで読んでくれてありがとうございます。
何か疑問点があればお気軽にコメントをお願い致します。